人類最古の争いの形態をめぐっては、考古学的な人骨の分析からカニバリズムの存在が指摘されている。グラン・ドリナ遺跡等の知見によれば、初期人類は慢性的な飢餓や厳しい自然環境下での生存戦略として、他集団を食糧資源と見なす捕食的紛争を行っていた可能性が高い。しかし、新人の登場以降、紛争の性質は変容する。言語による集団内の結束と象徴文化の発展は、死者の埋葬に見られるような他者の個体識別と儀式性を生んだ。これにより、争いの目的は単なる捕食から、テリトリーの防衛や集団の優位性誇示へと移行し、食人は敵の力を取り込む宗教的・社会的な「副産物」へと変質した。つまり、当初の生存に直結した「捕食」という生物学的闘争が、社会構造の複雑化に伴い、資源や名誉を巡る政治的・集団的な「戦争」へと純化していった過程として捉えることができる。