その瞬間、乃木はこれまで自分がしてきたことを思い返す。テントの幹部や別班の人間に対して、家族や愛する人を利用して尋問し、Fとして相手の感情を切り捨てながら任務を遂行してきた。今度はその論理を、自分自身が受ける番になる。大義のために愛する人を犠牲にするという、これまで他人に強いてきた選択を、最後には乃木自身が選ばされる。
そして、ここで父・ベキとの対比が完成する。ベキは最後まで愛する息子を殺さなかった。大義や復讐よりも、最後には息子を守ることを選んだ。対して乃木は、愛する人を犠牲にして国を選ぶ。愛する者を守った父と、大義のために愛する者を犠牲にした息子。その選択は正反対になる。
世界から見れば、乃木はテロを阻止した英雄になる。しかし乃木自身は、自分が本当に正しいことをしたのか分からなくなる。世界を救ったという結果だけを見れば正義だが、そのために自分が最も愛する人を殺した以上、自分がこれまで悪としてきた人間たちと何が違うのか分からなくなる。
そして最後に乃木は、自分自身を犠牲にすることを選ぶ。世界を救うために愛する人を殺した男が、最後には自分自身を犠牲にする。